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「ドラゴンの肉は食べれば強靭な身体になるが、心臓だけは決して食べてはいけないんだ。ドラゴンの心臓には意志が宿り、心臓を食べた動物はドラゴンへと変わってしまう」
「変わる?ドラゴンになっちゃうの?そんな事本当にあるんですか?」
「あるよ。興味本位で食べた人がドラゴンに変わるのを何度も目にしたよ。そんな中ね、僕は白種の心臓を半分食べているんだ」
フィレルは目を瞑り、当時を思い出す。
二十年程前、村が黒種に襲われ壊滅し、家の下敷きとなったフィレルは無力に死を待っていた。
だが現れたのは死神ではなく白種のドラゴンで、その白種は喉下辺りの鱗を捲り、露わになった二つの心臓の内一つをフィレルに食べさせた。
フィレルは力がみなぎってきて、自力で家の下から這い出した。
齢七歳にして、フィレルは白種に近い肉体を手に入れたのである。
「その白種がフィレルさんを助けてくれたんですね!」
「良く言えばそうだけど、実際は保険だ。大戦の初期のあの頃は、いつ誰が死んでもおかしくなかった。白種は自身が殺された時用に、代わりを用意したんだよ。彼が生き残ったから僕も存在できているけど、彼が死んだ時、僕の身体は完全にドラゴンと化し、心も乗っ取られるだろう」
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