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一方その頃。
王宮は俄かに騒がしくなっていた。
早朝から、新皇后となる筈のシレーアの姿が無い。
何故なら黒髪の魔女は、北の塔の地下に向かっていたからである。
「あの、あの銀髪の小僧が! いつの間に城に侵入を許したの⁉」
カツカツと靴音も高く地下に向かう階段を下りてゆくシレーア。その後を、金髪の近衛騎士団長が追い掛ける。苛立つ魔女は、憤激収まらぬ様子で、団長を罵った。
「あれ程! あれ程、警戒せよと命じたのに‼ 皇王直属の騎士団が、何故こんな失態を⁈ 」
「弁明の言葉もございません、シレーア様。」
しれっと答える団長の頬を、立ち止まったシレーアが、振り向き様に平手打ちした。
「お黙り! この、私生児が‼」
「────。」
「前皇后の不義の子であるお前を、この地位まで引き上げてやったのは私よ⁈ なのに、その恩を忘れて、オクタビアの監視に手を抜いたわね? そうまでして、実の母を助けたかったというの⁇ あの女は、いずれお前を遠ざけようと画策していたのよ。それを、私が進言して助けてあげたんじゃない! 忘れたの⁇」
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