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月に一度か二度、大地に恵を齎す雨は、その現象そのものが神として祀られている。
乾季の長いクレメリア皇国にとって、雨は、それ程に貴重なものであった。
「雨の女神オルテアよ。どうかお母様をお護りください。」
両の手を組み、祈るセイラーン。
その端正な横顔を視界の端に見ると、姉姫もまた、雨の女神に家族の無事を祈った。
その祈りが届いたのか──
やがて雨は、水の弾幕に変じて、追っ手から幼い姉弟を隠してくれた。
しとど降る雨の腕に護られて──
クレメリア皇国の皇女と皇子は、城下の街を目指したのである。
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