絶望の夜

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「兵士長!だんまりで済ませるおつもりか!?」  とうとう声を荒らげるギルド長。 そこへ、身なりを整えた近衛騎士団が、軍馬を連ねてやって来た。先頭に立つのは、騎士団長エイダム卿である。若いが、腕の立つ剣士だ。華やかな黄金(きん)の巻き毛と、深い湖水の蒼を湛えた瞳が美しい。  美丈夫にして聡明なエイダム卿を前に、城門を囲む兵士等も一様に息を飲んだ。静まり返る一同を見渡すと──若き騎士団長は、美しい所作で馬を降り、言う。 「──失礼、ギルド長グレアム殿。ご報告も儘ならず、かかる事態に及びましたこと、心よりお詫び申し上げる。仔細は、私からご説明申し上げましょう。そう…出来れば場所を改めて。」 極めて慇懃(いんぎん)に頭を下げれば、ギルド長も怒りを収めて答える。 「承知いたしました。では、エイダム卿。宜しければ、拙宅へ。」 「恐れ入る」と、二度頭を垂れて、エイダム卿は承諾した。 二名は、連れ立ってギルド長グレアムの自宅へ向かう。片や、城門の警備には、一般兵士に代わって、近衛騎士団が配された。  目まぐるしく変わる状況に、ファミールの人々は不安の色を濃くする。振り出した雨が、これから起こる恐ろしい出来事を予感させる宵だった。  
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