絶望の夜

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 その頃。 王家の美しい姉弟は、雨のロシタナー平原を、ひたすら馳せていた。 肌を打つ雨が、徐々に強く激しくなる。 それでも、もう二度と馬を止める事は無かった。 差し向けられた刺客が、既に、彼等の姿を捕らえていたのである。 アリエスは、追手を()く方法を、脳内で何度もシミュレーションした。あらゆる方法で、この難を逃れようと画策したが──思い付いた方法は、どれも延命に繋がりそうにない。 一体、どこまで逃げれば良いのか? このまま白鷲城を目指しても、先回りされて仕留められる。ならば、いっそのこと… (駄目。気を(しっか)り持ちなさい──アリエス!) 弱気になり掛けた自身を鼓舞して、アリエスは手綱を握り直した。 死と隣り合わせの逃亡劇は、幼い皇女を絶望の淵に追いやろうとする。容赦なく叩き付ける水の礫が、二人の華奢な体から、否応無しに熱を奪っていった。
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