絶望の夜

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──同刻。 首都ファミールでは、ギルド長グレアムと、近衛騎士団長のヒース・エイダム卿が、深刻な表情で密談していた。 「そんな!皇王陛下が…亡くなられた、と?!」 信じ難い出来事に、瞠目するグレアム。 黒々と蓄えた顎鬚(あごひげ)を撫で、俯き、押し黙ってしまう。 重く塞ぐ空気の中、騎士団長ヒースは、溜息混じりに語った。 「残念ながら、全て現実に起きた事でございます。我等、近衛騎士団も、全力を上げて謀叛人の捜索にあたっております。その為にも城門を閉ざし、暴漢の逃走を阻止する必要が。どうか、ファミール市民にもご協力願いたい。」 「そういう事とは露知らず…。承知致しました。私の力の及ぶ限り、ご協力致します。」  そう言って渋面を刻むグレアムに、ヒースは小さく頷いて続ける。 「謀叛人の正体は、既に掴んでおります。が、市内に潜伏しているであろう今、下手に騒ぎを大きくすれば、どんな暴挙に及ぶか解らない…。ここは、慎重に対処すべきと判断致しました。皇王陛下が亡くなられたという事実は、どうか未だ内密にして頂きたい。」 潜めた声に、深刻さが滲む。 グレアムは、神妙に頷いて言った。 「(かしこ)まりました。城門の管理は、お任せ下さい。ギルド長グレアム・ランドゥの名に()いて、蟻の一匹たりとも通しません。」
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