皇王の宝

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 「はいはい」と御座なりな返事をして、リュカは肩を竦める。レイシャールは多少気を悪くしたものの、気を取り直してセイラーンを振り返った。 「皇子殿下、魔神が動いている間は、身を潜める必要がありましょう? 我らの次の目的地は⁇」 「皇王の霊廟(れいびょう)だ。」 「霊廟? そこは禁足地では?」  驚く魔導士に、セイラーンは言う。 「問題ない。皇王の資格を得た僕が許可することで、足を踏み入れることは可能だ。そこで、眠りに就かれた父上の御霊(みたま)と交神する。父王は、この一連の事件の、唯一の目撃者であらせられる。誰によって(しい)されたのか、父上御自らの言葉で語って頂こう。」 「まさか…ゲオルグ皇王(おう)の死霊を呼び出すのですか⁉」  驚愕するレイシャール。 それもその筈。死者との対話は、究極の神聖魔法の一つである。大神官と同等か、それ以上の力を持った聖者にしか成しえない大法だ。  片や、レヴァントは面白そうに片側の口角を吊り上げて── 「成程、確かにな。事件の真相は、当事者から聞くのが一番だ。だが、そんなことが本当に出来なさるのかい、皇子殿下?」  試すような視線を向けられて、セイラーンは、初めて不敵な笑みを浮かべた。澄んだ菫色の瞳を、キラリと輝かせて言う。 「無論だ、レヴァント。その為の資格と力を、僕はったった今、女神アガナスから受け取ったのだから。──さぁ、行こう。この謀略を無に帰す為には、まだまだ多くの仕掛けが必要だ。確実に反逆者たちを追い詰め、僕が全てを奪い返して見せる!」   強く示されたその決意に、一同は勇ましく頷いて見せた。 じりじりと、簒奪者たちの喉元に歩み寄るセイラーン。 命を懸けた逆転劇に、若き皇王は、不思議な高揚を覚える。その眼差しは、遥か未来(さき)にある奇跡と成功だけを捕らえていた。
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