闘争の朝

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「レヴァント・アドラー族長。」 キャラバン隊長に、真摯な眼差しを向けて…アリエスが言った。 「キャラバンは、我が国にとって大切な情報提供者であり、ギルドの盟友であり、大陸の勇者です。クレメリア皇族として、貴方がたにご迷惑をお掛けする事は、決してございません。直ぐに立ち去りますので、どうか私達の事は、お忘れ下さい。」 そうして、深々と頭を下げる。 傍らのセイラーンも、姉姫に(なら)って頭を下げ、心からの感謝を伝えた。 「レヴァント隊長には、危ないところをお助け頂き、姉共々、心より感謝申し上げます。温かいお気遣い、ありがとうございました。このご恩は、一生忘れません。」 それは、彼等の『別れの言葉』であった。 姉姫は、弟の手を取ると、慎重に寝台を降り立って深々と礼をする。今にも倒れそうなその身体を、セイラーンが抱きかかえる様にして支えていた。 「…どうするつもりだい?」 レヴァントの問い掛けに、アリエスは答える。 「旅支度を致します。直ぐにでも、此処を離れなくては…追っ手が。」 現実は、まだまだ厳しい。 王都ファミールへ辿り着くまでは、彼等に休息の時など無いのだ。 レヴァントは、そんな二人を、ただ眺めている。僅かばかりの荷物を纏める幼い姉弟を、巫女リネルも、ハラハラと見守っていた。
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