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「男達は、こっちに来い!女は右だ!!」
ギルドの分団長達が先頭に立って、検閲の列を誘導している。大道芸人たちの、華やかな列に紛れて…レダニアは、順番を待った。
キャラバンの女達は、検閲など慣れたもので、検閲官の男達に妖しく目配せをしては、次々に城下へ入ってゆく。
レダニアも、検閲官の男に豊満な胸を押し付けて、しなを作ってみせた。すると、男はあっさり陥落し、何の取り調べもせずに、彼女を城下へ通してしまう。
難無く王都への潜入に成功した褐色の踊り子は、身に着けた煌びやかな衣装を、通りすがりのロバの背に引っ掛けると、狭い路地に紛れ込んだ。
街の飲食店では、城下の人々が、この騒ぎについて噂話をしている。
「一体、何事だ?城門を閉じるなんて??」
「王宮近衛騎士団も、久し振りに見たよ。」
「まぁ、近衛騎士団なんざ、普段お目に掛かることが無いからなぁ。」
「そういや、午後の鐘が二つ鳴る頃、王宮広場で重大な発表があるらしいぞ。」
「何だよ、戦でも始めるつもりか?」
ざわざわ…
ざわざわ…ざわ…
聞こえて来る雑多な会話を繋げて、レダニアは、状況を把握する。
(午後の鐘が二つ鳴る時…王宮広場で…)
頭の中に覚書をすると、褐色の踊り子は踵を返した。目指すは、王宮広場である。
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