146人が本棚に入れています
本棚に追加
「姉上、姉上!」
後を走る皇子が、前を行く姉に声を掛ける。姉姫は、後ろを振り向きもせずに答えた。
「お喋りは禁物よ、舌を噛むわ!」
「姉上、待って!少しだけ!!」
弟の渾身の叫びに、アリエスは漸く馬を止めた。荒く乱れる馬の息が、宵闇に淡く烟る。
「どうしたというの、セイラーン?? 王城まで、まだ16リーグもあるのよ。急がなければ、お母様が!!」
「解っています。でも、少しだけ。少しだけ、馬に水を飲ませて下さい。エール号が死んでしまいます!」
最初のコメントを投稿しよう!