絶望の夜

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アリエスは、はたと気付いて、弟の馬を見遣る。 牝馬(ひんば)エールタリア号は、王宮一の駿馬(しゅんめ)であったが、何時にない空気を読み取ったのか、怯えた様に首を振っていた。 「エール…貴方にも解るのね。」 アリエスは馬を降り、エール号を宥める様に、その鼻先を撫でる。 「解ったわ。少しだけ休みましょう。馬が倒れてしまっては、城へ帰ることも出来ないもの。」 姉姫の言葉に、セイラーンは、ホッと息を吐く。 母の安否は気になるが…かと言って、血気に逸り、考え無しに乗り込んでは、自ら命を落とし兼ねない。 「作戦を立てましょう、姉上。先ずは、敵に気付かれずに城へ入る手立てを考えなくては。」 「そうね。冷静に。」
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