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大衆の前に立ち、高々と手を差し上げるリオルド。
脇に控えていた近衛騎士団の長、ヒース・エイダム伯爵が、醒めた眼差しでそれを眺めている。
湖水の蒼を湛えたその瞳に、ほんの僅か、侮蔑の色が滲んでいた事を…見咎めた者は無かった。
一方。広場に集まった大衆に紛れて、演説の一部始終を聞いていたレダニアは、思い掛け無い展開に、眉間をキツく寄り合わせた。
「不味い事になったわね…」
誰にともなく呟くと、長布を頭から被って、その場を立ち去る。
褐色の肌の踊り子は、その夜の内に城門を抜けて、王都ファミールを後にした。
──検閲所では、レダニアが差し入れた『新王誕生の祝い酒』に酔い潰れた門兵らが、盃を握ったまま泥酔していた。
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