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傘を差しだす招待屋
それは、ある雨が降った日の事だ。
大雨のため、持ってきた傘が強風でバキバキに折れてしまい、俺は雨宿
りできるところまで走っていた。
そして、近くの駄菓子屋さんで雨宿りし、スーツに着いた水滴を取ろうとハン
カチを出した。
「結構降ってるな…。」
空はとても暗い色で、気味が悪かった。
「早く止むといいな…。」
すると、遠くの方で誰かがこちらに歩いて来る姿が見えた。
遠くからでも分かる白いワンピースに、赤い傘。
そして、ロングヘアの黒髪が一歩一歩踏み入れるごとに左右に揺れる。
だが、それは少しおかしく見えた。
俺が今いる現時点では、風が荒々しいのに、なぜその少女の服装は風に揺れて
いない…?
まるで、そこだけ風がないように見えた。
俺は、背筋に寒気が走り違うところで雨宿りしようとその場を離れようとした
その瞬間。
「珍しいですね。こんな場所に人がいるなんて。」
少し低音の暗い声に、脈がワンテンポ早く加
速した。
ゆっくり顔を上げると、そこにはさっきまで遠くにいたはずの少女が目の前に
いた。
赤い傘をくるくる回しながら少女は、口の口角が上がり薄気味悪く笑っていた。
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