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その建物は五階建てくらいで横に長い。堂々とそびえ立つものの、威圧を感じさせないデザインだ。むしろ上品さがあって涼しげな印象さえ受ける、不思議な建造物だった。
「こちらの建物の1階、入国審査・手続きと書かれた列にお並びくださいませ」
そう告げると流れるような美しい仕草でアンドロイドの案内は去って行った。
「では早速並ぶのだ」
魔王サマはキョロキョロと辺りを見回しながら、楽しくてたまらないという感じで建物の中へ進むのだった。
建物の外観も素晴らしかったが、中は更に圧巻だった。広いロビーにいくつかの窓口が並び、人間、獣人、ドワーフやエルフまで様々な種族が行き交っていたのだ。
「すごい!すごいのだ!」
魔王サマははしゃぎっぱなしである。わかっていた事だが、見た目だけでなく精神までお子様だった。
一番手前の窓口に 入国審査・手続き の文字がある。こっちには魔王領しかない為か誰も並んでいない。
「すみません。入国手続きがしたいのですが」
受付の可愛らしい女の子に声をかける。もちろんこの子もアンドロイドである。
「はい。了解致しました」
そのあといくつか質問に答えて、無事審査に受かったのだった。魔王領方面から来た、かなり怪しいであろう二人組を入国させる辺り、警備にはかなり自信があると見てとれた。
「入国金は出国される際に請求させて頂くようになります。宜しければこちらの書類にサインをお願い致します」
手続き書を渡され、サインをする。
「これで手続きは完了です。お疲れ様でした。
それでは、ジナ皇国 最新都市 ハルナストへようこそ。我が国の誇る技術の中心地を心ゆくまでお楽しみくださいませ。尚、ジナ皇国内でしたら自由に他の都市も観光が可能です。
技術と作物の国で、素敵な時間をお過ごし下さい。」
こうして、魔王サマとそのメイドは初めての外の国、ジナ皇国に足を踏み入れたのであった。
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