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「でも、僕らは孤独な吸血鬼じゃないから」
そう言って成海先輩は優しく笑う。
「良かった、私先輩がマジもんの吸血鬼かと思っちゃいましたよ」
しかし先輩は何も言わず、意味ありげに笑うだけ。
「え?」
私は咄嗟に首を手で隠した。
文化祭本番、成海先輩は黒いマントと吸血鬼の牙を用意し、私はシンプルなピンク色のワンピースと白のエプロンを用意した。これも全て先輩の要望通りである。
「血のりって本当の血っぽいね」
先輩は私の首筋に垂らして遊んでいる。
「あの先輩、そのくすぐったいです」
「ふふ」
指が当たって本当にくすぐったいし、恥ずかしい。
「ねえ、村雲さん」
「ハイ」
「トマトジュースがかかった村雲さんの首筋美味しそうだったなぁ」
「ひっ!」
振り返ると先輩は腹を抱えて笑っている。
「もう! 私やっぱり文芸部辞める!」
「ウソウソ。からかうの楽しくて」
最近の成海先輩は変態おっさん化している。
本番が始まると先輩はいつもの調子ではなく、低い声で苦しそうに荒くその台詞を放った。
「君の血がのみたい」と。
私はその声で背筋がぞくりと粟立つ。
成海先輩が言うなら私はきっと差し出してしまうのでしょう。
この先も私は彼に勝てない。
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