Close the Nuclear Umbrella

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 もはや米国の核の傘は存在しない。核兵器が使われたら日本はどうしようもないではないか。そう考えた人たちがパニックに陥り、核軍備を要求するデモが多発した。日本を脱出する人々も激増した。しかし、首相は断固として首を縦に振らなかった。野党も非核三原則の保持と護憲を打ち出している立場上、核軍備を唱えることはできなかった。そんな矢先のことだった。  とうとう、某国が日本に対し宣戦布告を行ったのだ。そして、数時間以内に東京に対して核攻撃を行う、と一方的に通告した。時を同じくして某国のミサイル基地から、核弾頭を積んだIRBM(中距離弾道ミサイル)が発射されようとしていた。  しかし。  いきなり、その発射寸前のミサイルが爆発したのだ。  某国は国内のメディア向けには、ロケットエンジンの不調による打ち上げ失敗、という発表を行ったが、爆発したのは明らかに打ち上げ前だった。しかも爆発したのはロケットエンジンではない。核弾頭だったのだ。それが核爆発であったことは、その後に大気中の放射能濃度が上がったことからも間違いなかった。  だが、メガトン級の核弾頭にしては、その爆発はかなり小さかった。だとすれば起爆装置の暴発とも考えられない。  いったい、何が起きたのか。世界中の軍事関係者が首を捻っていた。  その時点でその答えを知っているのは、世界中でも俺を含めわずか数名にすぎなかった。 ---
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