Close the Nuclear Umbrella

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Close the Nuclear Umbrella

 俺が子供の頃、降ってくる雨には放射能が混じっていた。  1960年代前半まで、米国、ソ連(当時)、中国、インドなどで核実験が当たり前のように行われていて、莫大な量の放射性物質が大気に放出されていた。それが雨に含まれて落ちていたのだ。  あの頃は、雨に当たるな、当たるとハゲるぞ、などと親によく言われていた。しかしクソガキだった俺はそんなことを全く気にせず、雨の中傘もささずにずぶ濡れになってよく遊んでいたものだった。  もうあれから半世紀が過ぎた。そして……親の予言は見事に的中した。三十代になったあたりでやけに額が広くなってきたな、と思っていたら、気が付けばあっという間にツルッパゲになっていた。  というわけで、俺は俺から全ての毛髪を奪った放射能、そしてその放射能を世界中にバラまいた核爆弾という奴に、大きな恨みを抱いているわけだ。  まあしかし、実際のところそれが本当に放射能のせいなのかどうかは分からない。遺伝的要因もあるとか言われているし、何と言っても……元の職業が一番の原因だったんじゃないか、とも思う。  そう。  戦闘機パイロットなんて、イメージはかっこいいものの、実は意外にハゲでチビな奴が多かったりする。搭乗中は常に通気性の悪いヘルメットをかぶっているわけだから、髪の毛が被るダメージは計り知れない。そして、背の高い奴は脳から心臓までの距離が長く、G(旋回でかかる加速度)がかかるとすぐに血が下がってブラックアウトしてしまう。
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