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「ねぇ、パパ?私ってなんなのかなぁ?」
夕飯の片付けをしながらパパを見上げると、鍋の焦げを落としていたパパは間抜けな声で「んんー?」と返事をした。
幼児特有のまぁるい握りこぶし。まぁるい膝小僧。尻の蒙古斑も青々と消えないまま50年が経った。
私は他人の血を吸おうなんてこれっぽっちも思った事がない。
ママの血とパパの血が半々に入っているということだろうか。
人の血も吸わずに幼児体型のまま半世紀も生き続け、バンパイアでないとしたら私は何という生き物なんだろうか。
「レイは……、レイだなぁ」
鍋を見つめて一心不乱なパパからはまともな答えが返ってくるはずもなく、ハイハイとため息を吐く。
わかっている。
パパにだって私が何かなんて実際わからないんだ。
ものすごく成長が遅い人間みたいな生き物。そんな言葉で表すしかない。私には生物学的な種類は与えられていない。
「レイはレイだよ。ママが生んだかわいいかわいい娘だよ」
そう言ってパパは洗剤臭い手で私の髪を撫でる。
もう私、中身は子供じゃないんだけど。
でも、そうね。
私は私でパパはパパ。私達の間には切っても切れない繋がりがある。ママが残した愛がある。誇るべき絆がある。
私は、幸せだ。
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