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「昨日からキリキリ胃が痛むんです」 そう答えた私に彼は困ったような顔でこう言った。 「それは大変でしたね」と。 私以上に深刻な顔になってしまった先生を見て、おかしさがこみ上げてきた。 「どうしました?すごく痛くなっちゃいましたか?」 肩を震わせて笑いを堪える私にかけられた言葉で、耐えられなくなった私はついに噴き出した。 「なんか、先生のほうが痛そうな顔になってるっ……、あははははっ」 「え、だってあなたが痛そうだからつい……、って笑える元気あるんじゃないですかっ」 「ふふふふ痛いけど笑っちゃう、なんとかしてよ先生っ」 「もー、あなたは……」 診察室で笑い転げる私に、胃薬を処方しながら先生は言った。 「なんにしても悩みすぎないことです。次からは痛くなる前に相談に来なさい」 私が先生に恋をしたのはきっとこの日だ。 いつも情けない笑顔で弱々しく笑っている先生が、頼もしく見えて。 先生と話をしていれば、体の不調なんて忘れてしまうくらい。 私は先生に夢中だった。
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