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「パパー!段ボールが足りないー」
一階で片付けをしてるであろうパパに、二階から大声で話しかける。
「えー、困ったなぁ……あと何箱くらい必要?」
小さな小さな木造二階建ての診療所。狭くて急な階段を埃まみれになったパパが上がってきた。
「私のお洋服増えたもん。入らない」
「そうかぁ。年頃の娘さんは大変ですねぇ……」
ポリポリと頬を掻くパパを苛めたくて、私はわかりきった事をまた聞いてしまう。
「ねぇパパ。引っ越さなきゃだめ?ここの患者さんみんないい人ばかりじゃない?私だってせっかくお友達たくさんできたのに」
この台詞はパパを泣きそうな顔にしてしまう。わかっているけど私は、聞いてしまう。
「ごめんね。レイ。何十年かしたらいつかまた戻って来てもいいから。今はここの人たちとはお別れしなきゃならないよ」
「わかってるよ。……言ってみただけ」
なかなか年を取らない私達親子が一ヵ所に定住できるわけもなく、数年のサイクルで各地を転々としているわけだけど。
最近は人との別れが少々つらい。
だからってパパを責めたら本当に泣いちゃいそうだし私はついてゆくしかないんだけれど。
「冗談だよ。パパ、ごめんね?大好き」
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