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その日も私はいつものように、診察終了時間ギリギリで待ち合い室に飛び込んだ。
いつもとちょっと違っているのは、入り口に一組の履き物があるという事。これはまだ患者さんが一人残っているという事。
私は先生を驚かそうと思って待ち合い室で息を潜めていたけれど、ふと感じた違和感に、そっと診察室を覗き込む。
話し声一つせず、静まり返った診察室には、気を失っているらしい患者さんと、その首筋にかじりつく先生がいて。
驚いた私はその場から動けなくなった。
そして先生と目が合った。
先生の見開かれた目が途端に悲しげに潤む。
ああ、どうしよう。
私の大好きな先生は、どうやら人ではなかったみたい。
私はこの人をこの先も愛し続ける事ができるだろうか。
慌てふためく先生に、どんな言葉をかけたらいいのかわからなくて。
私はとりあえず
「私の血じゃあ駄目なんですか?」とヤキモチ混じりの台詞を呟いてしまった。
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