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拾弐冊目 最終巻
細川綴は、とある「店」に来ていた。あまり現実感のないその空間には、まるで図書館の様に大量の本が置いてある。
「それでは、綴さん。契約の内容は、この通りでよろしいですね?」
店主だと言う男に茶を振る舞われ、とある「契約」を交わす綴。その内容は、自分自身ではなく、先輩であった汐理のためのモノだった。
「……チャンスは一度きりですよ。もし、この内容通りに進められなければ……この契約も無駄になってしまいます。……本当によろしいのですね?」
何度も、しつこいくらいにそう尋ねてくる店主に、綴は是と答える。すると、淡い青色の、文庫本程度の大きさの書物が綴に手渡される。
中身を確認すると、これから綴が起こす行動について、――汐理を『出口のない図書館』から救い出す方法が綴られていた。
「……ありがとう」
そう言う綴に、店主の男はにっこりと笑みを浮かべ、店の出口の方へと促す。
「さぁ、時間が有りません。貴女にも、彼にも」
そう言われ、席から立ち上がった綴は、学校指定の鞄にその青の本をしまい込み、店を後にした。
「……彼らの運命に、幸あらんことを」
黒髪に眼鏡をかけた、長身の店主は、そう言いながら、一人茶を啜っていた。
完
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