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「……帰ります」
もう僕は力尽きていた。
僕の背中に、「カズちゃん、またいらっしゃい」と綾さんの声が響いて消えた。
眩しいくらいの快晴の空の下。僕は絶望の陽に濡れる。髪から滴り落ちた光がアスファルトに染み入るようだ。何を探すか前行くカラスに導かれるように歩く。陽を浴びて艶めく黒にはエメラルドがあり、アメジストがあり。その黒で傘を作ったならば、僕も濡れずにいられるだろうか。寒さに凍えることもないだろうか。
僕は絶望の陽に濡れながら、カラスに導かれるように歩いた。
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