陽に濡れる

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陽に濡れる

 それから二週間程は時間の都合がつかずに逢えない日々が続いた。  寂しく憂鬱な週末を過ごし、明けて月曜日の昼に届いた貴樹からのメッセージで、僕のそれまでの薄靄なんてどこ吹く風に流された。珍しく土曜日に逢う約束と、札幌行きの話を詰めようとの内容に、踊った心がさらに跳ね上がる。  梅雨を忘れたような空は、日増しにます熱量とともに、僕に夏を待つ楽しみを届けてくれた。  ただ、金曜日になっても貴樹からの連絡は来なかった。まめじゃないのは分かっているので、あまり深く考えずに土曜日を迎えた。  時間は十一時を回っている。まだ、寝てるのかな? それとも綾さん絡みなのか。いろいろ頭を巡るも、なかなか連絡できずにいた。  悶々とした時間を過ごしていると、右手に握っていた携帯が呼び出し音と共に震える。  ろくに画面も見ずに電話に出る。 「もしもし! たか……」  言い終わる前に聞き覚えのある女性の声が重なる。 「カズちゃん、今大丈夫?」  いきなりの綾さんからの電話に戸惑いと不安を覚えて暫く声が出せなかった。 「カズちゃん?」  いつも通りの柔らかい口調の中にも、何か硬質な雰囲気を纏った声に、僕はようやく口を開いた。 「あ、綾さん、どうしました?」 「話したいことがあるから、今から店に来てちょうだい」  断る術を与えない、そんな響きが籠っている。 「は、はい。分かりました……」  そう言って電話を切った僕は、これからの展開を予想するまでもなく震えた。  
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