ばあちゃんはぼくを見てくれない

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ばあちゃんはぼくを見てくれない

 その日も、ばあちゃんは傘をさして、ひょこひょこと 家を出ていってしまった。ママは買い物に行ってるのに。 「ばあちゃん、待って」  ぼくはばあちゃんの後を、慌ててついていった。 「ばあちゃん、帰ろう」  ばあちゃんは、ぼくを見てくれない。 「そうちゃんのね」  ばあちゃんが、ぼそりと呟いた。ばあちゃんが答えてくれた! 「そうだよ、ぼくが『そうた』だよ」  でも、ばあちゃんはぼくを見ていなかった。 「あのね、そうちゃんの雨を呼んでるのよ」 「ぼくの雨?」  なんのことだろう? ばあちゃんは、ぼそぼそと話し始めた。 「そうちゃんはね、私が買ってあげた、黄色い傘が大好きでね。 黄色い傘をさして歩くと、雨が降ってくるって喜んだの。 『ぼくの雨だ』って、いってね」  ばあちゃんは、懐かしそうに笑った。 「ばあちゃんは、『そうちゃんの雨』を呼びたかったの?」  ばあちゃんが、ゆっくりとぼくのほうを見た。 「そうよ。あなた、うちの孫のそうちゃんを知ってるの?」  ばあちゃんは、ぼくがわからないんだ。 「そうちゃんの雨、まだかしらねぇ? 雨が降ったら そうちゃん笑ってくれるのに」  ばあちゃんは、さびしそうに空を見上げた。
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