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逆流の勢いから妖の悪戯
ついに、ザァーザァーと音をたてる逆流がぶつかる流れへ来た。
太一は、今回ばかりは無理だろうと、決めつけて死ぬ決心をした。
流れていく葉の群れが、自分自身であるかもしれないと、錯覚してしまう。
焦りと終わりが来た。
ーあぁ、僕の命は、ここで、お終いなのだ。
そう悟るように考えてしまう。
ーー矢張り、こやつを守るべきだな。
ーーこんな弱気では、天竜川の水神様へはたどり着けんわい。
ーー姿を現すか。
ーー覚悟はいいかい?皆の者、
ーーいいよ。主よ!いつでも来い!
すると、太一と船を囲むように突如姿を現した妖たちの姿に、驚きのあまり、不安なんて消えた。
それを見た妖達は、せーので船を軽々と担ぎあげ、逆流が強い中をせっせと運び、そのあとの緩やかで神聖な雰囲気を思わせる、そんな景色の広がるところに船を置かれ、
ーー達者でな。
という声と共に妖達の姿は消え、寂しく残ったのは、太一と船だけであった。
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