船大工、太一。

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船大工、太一。

太一は、一佐に言われた。 「太一、君は謝るという心を改めて知った方がいい。」と。 もちろん太一にはそんな心も根性も持ち合わせていない、ただの船大工だ。 誰になんと言われようと気にしない、そんな船大工だ。 だか、そんな太一も今日の失敗は、へこみはする。 何をしたかって言うと、話が長くなるので要約して言うとですね、船霊(ふなだま)という船の守り神を船大工が普通船下し(ふなおろし)という作業で下ろすのだが、 今月は、災害が多く船が壊れた者が多く、人でも足りない。というので太一は1つの船に船霊を入れ忘れたのだ。 だが、その船を作れと依頼した人は死去し、どうしようかと迷っていた。 ーー結局、太一の作った船はその一隻だけ出来たのだった。 帰る時間になり、もぬけの殻の太一と、その船霊を入れ忘れたご主人の居ない船だけが並んで月を見ていた。 すると、船は天竜川へ、 するすると、 まるで生きているかの様に、 川へ入っていった。 太一は焦った。 別にそのままにしておいても良かった船を。 船に呼ばれるようにして、川へ入っていった。
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