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奇妙に鳴く小鳥の群れ
太一は腹も空かない、眠くもならないこの時を「夢」だと思っていた。
しかしながら、この後にこれは夢とは違う、他の何かだと知ることが出来たし、川、もとい自然を舐めてはいけないと改めて太一は知った。
太一の感覚で亥の刻になった辺りに異変が起きた。
1匹の鳥が
「チョロチョロチョン」
と鳴くと、それに答えるかのように、
「チョロチョロヂョン」
と鳴き始めた。
初めは2、3匹程だったのが今では増えて何匹か数えられなくなっていた。
それが耐え難いぐらいに五月蝿くなっていくと鳴き声なんかよりも水の打ち付けるような、そんな騒々しい音が響いてきた。
やはり予感は当たり、このままでは死に至ると考え、船を止めようとしたが、言うことを聞かなかった。
ーーもう助からないかもしれない。
太一は、信じてもいない神に助けを求めていた。
《助けたら、私の事を、忘れないで居てくれるか?》
不意にそんな声が聞こえたので、力任せに、ーーああ、忘れないともさ!
と勢いよく言ってしまった。
ーーー
その後のことは全く覚えていなかった。
何か、幸運が舞い降りたのだと、太一は思うことにした。が、かなり無理があった。
なぜなら、あの声は何なのか、それは、明確にしてボヤがかかったような存在である事が証明された。
太一は、恐ろしやと思った。
世には信じ難い現象が起き、それがあったとしても、何事も無かったかのように、のほほんと時が流れる、これはひどいものだ。
太一は、恐ろしさと同時に冒険心というものを持ち始めた。それは、この船霊のない船と伴に声の主を探すことであった。
そして、太一と船は声の主つまり、天竜川の神を探しに長い永い旅に行くのでした。
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