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そのひと
七歳の、クリスマス近い冬の夜だった。アンディにしがみついて眠れないでいたら、あのひとが現れたんだ。
アンディは、あの頃うちで飼っていたおじいちゃんゴールデンレトリバー。もう長いことごはんの時以外眠って過ごしていた。
そのひとは、満天の星空柄の変な形の仮面をつけて、青空と雲がプリントされたローブを着て、カラフルな傘を一本持っていた。
戸締まりはきっちりしていたはずで、どこから入ってきたかわからない。でも、不思議と怖くはなかった。
変なかっこうだなって見つめていたら、そのひとはカラフルな傘の先を天井に向けて、ぱっと開いた。その瞬間僕は急に眠くなった。
まぶたが落ちきる直前に見たのは、寝たきりだったアンディが、傘をさしたそのひとと一緒にカラフルな道をとことこ歩いていくところ。でもその光景を見ている間もずっと、アンディのやわらかい毛並みの感触を腕に感じていた。
お母さんに起こされたときはもう朝で、アンディの身体は温かさをなくしていた。息もしていなかった。僕はそこでようやく、大泣きした。
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