あきらと猫は無言で顔を見合わせ、ついに彼がぼそっと吐いた。
「…………無理だってやっぱ」
「ニャー!!」
「見られてんじゃん!」
「チッ、だからやめなさいって言ったのよ!」
亜沙の目の前であきらと肩に乗った猫はギャアギャア言い合いをはじめてしまった。
「この役立たずニャン!!」
「あっ語尾かわいい」
「うるさいニャン!!」
「わ、わ、ストップストップ!」
なぜかあきらが照れたように語尾をほめると猫はますます怒ってしまったようで言葉を荒げる。
それを見ていたあわあわと亜沙が猫のほうへ手をのばすと、彼女……いや彼猫? はその手に向かってシャーと唸り牙を向いた。
「人間ごときが触るニャン!」
「どっ……どっち?」
触るな、なのか、触るに語尾のニャンがついただけなのか。後者は不自然なので、きっと前者の触るな、だろう。
「お師匠様、怒ると語尾がニャンになっちゃうんだ」
「説明しニャくていいニャン!!」
「なるほど」
語尾だけでなく、途中でもニャが交じり始めた。微笑ましいがとても、それはもうプンプンなんていう擬音ではおさまらないほど怒っているようで、亜沙はおとなしく手を引っ込めた。
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