「亜沙ちゃんは、なんの用事?」
「えっと……、斉田さんのことを調べに?」
「なにそれ?」
彼は笑って目を細めた。あきらのことをもっと知ろうと思って訪れた家でこうなるとは思っていなかった亜沙は苦笑いする。
「言ってたじゃないですか、斉田さんを頼らないといけないことになるって」
「言ったね」
「どういうことなのかなと、思って……」
「ちょっと待って」
猫が声を挟む。彼の横顔を猫は鋭い目つきで睨んだ。しっぽは立ってゆらゆら揺れている。
「あきら、家を教えるだけじゃなくてそんなことも言ったニャン?!」
「はい言いました、あいだだだだだ!!!」
すかさず、猫は彼の頬にしっかり爪を立てる。そのままぐいっ、と下に下ろすと見事な爪のあとがミミズ腫れのようになって残った。あきらも涙目になっている。
―これ、返してもらった本にあったやつだ……。
どうやら本当にこの猫が暴れた――というよりかは、これまでの様子から察するに、猫を怒らせてしまって彼が爪攻撃から逃れるために本を盾にしたのかもしれない。
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