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「それは安心して、私がこの爪でしっかり魔法陣を解いておいたから」
「ま、魔法陣……ですか」
爪痕がのこっていた、返却された本。あれはきらりが怒って作り出したものではないという。
「魔法陣はヒトに見えないの。だからあきらや私が見ないといけないわけ。なのに、この子は延滞ばっかりしてついに一ヶ月図書館で借りられなくなったって言うじゃない」
「は、はい! リーラさん、質問です」
「いいわね、どうぞ」
リーラは元気よく、礼儀がよさそうな亜沙に好感を抱いたようで怒ったときとは違いしっぽをだらんと下げた。
「どうして魔法陣が図書館にある本に描かれるんですか?」
「ヒトを利用しているからよ」
「私達を……? 魔女さんが?」
「さんはいらない」
「あ、はい、すみません」
慌てて亜沙は謝る。あきらがのほほんと付け足した。
「お師匠様、魔女を敬うと怒るからね」
「言い方を改めなさい」
「お師匠様だけ敬ってればいいんだよ」
「わ、わかり、ました……」
真顔で言い改めるあきらの対応度の高さになかば驚きつつコクコクとうなずく。
リーラはフンとばかりに鼻を一度鳴らした。
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