/68ページ
「……全部借りるんですか?」
「えっと……はい、あはは」
カウンターの人に訝しまれながら、大学の図書館にはないからと理由をこじつけて、なんとか借りることに成功した。
文庫本ならともかく、リーラいわく全部文庫本だと意味がないという理由で多少分厚い専門書も混ざっている。
あらかじめ持ってきておいた袋に入れて、両手でよいしょと持ち上げた。
「ウッ……おも……何キロあるのこれ……」
よたよた、となんとか出口まで持っていこうと袋を引きずるようにしていると、エプロンをつけた青年が声をかけてきた。
「水城さん、大丈夫ですか?」
「は……、……どなたでしたっけ」
ぜえはぁ、と若者らしくない息をつく彼女に彼は苦笑いした。
「さっき受付にいた白金です」
「あ、ああ!」
そうだ、図書館の貸出カードを作ってくれた人だった。
「すみません、外に行けば友人が持ってくれるんですけど」
「ご友人が? 入ってこれないんですか?」
―……出禁になってることは言わないほうがいいかな?
自慢ではないが、いや自慢してもいいのだが、亜沙はこういうときの勘が鋭い。
「ちょっと用事があって、このあと合流することになってまして」
「そうでしたか……」
なんとかお茶を濁して、あはは、と空笑いをする。白金は手を差し出した。
「お持ちしますよ。重そうだから」
「えっ? あ、すみません……」
少しの距離だが、彼のほうが力持ちに見えた。おとなしくうなずく。
最初のコメントを投稿しよう!