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「ごめんなさーい、僕が亜沙ちゃんに頼んで借りてもらったんです」
「……そういうのやめてもらえます?」
「あ、あっ、ごめんなさい、私から言ったんです! 斉田さんが困ってるみたいだったから」
「違います」
「はい?」
あわててあきらを庇おうとした亜沙を一言で制して、白金は彼を見る目つきを鋭くする。
「斉田あきらさん」
「はい」
「いつもヘラヘラしていて楽しいですか? カウンターにきてもヘラヘラヘラヘラ、本を探すときもヘラヘラヘラヘラ、司書に話しかけるときもヘラヘラヘラヘラ!!」
―今、ヘラ何回言った?
ヘラを連呼しはじめた横に立つ青年、亜沙は何が起こったのかと目をぱちぱちしながら背の高い彼を見上げる。
「…………斉田さん、佳奈お姉さんにやるようなこと、よそでもやってました?」
「え? うん。だって友達だし」
「残念ながら顔見知りの範囲だと思うんですよ」
あきらが馴れ馴れしい態度なのは、亜沙もよく知っている。まさか友達だと思っていたとは……。
「そうだとしても、いいでしょ?」
「何が?」
「よくありません」
「えーっ」
亜沙と白金、両方に否定するようなことをいわれあきらは不満そうに口をとがらせた。
「とにかく、水城さんにしたみたいに、誰かに頼んでまで本を借りたいなら買ってください。そのほうが早いでしょう」
「そんなの、お金がいくらあってもたりないじゃん。いじわる」
「いじ……、失敬な」
ゴホン、と咳き込みながら白金は子供のような悪口をいったあきらを睨む。
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