三.

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 睨まれた彼は亜沙のほうを困った顔で見た。彼女は仕方ない、というふうに彼をかばうことに。というよりも気になることがあった。 「それはそうと……」  亜沙がこぼす。 「なんで、そこまで斉田さんに突っかかるんですか?」  ヘラヘラしていることだけが理由ではないはずだ。もちろん、リーラのやったことだけでもなく。知り合いに頼んで本を借りてもらうことがいけないことだとは、亜沙には思えなかった。 「……出禁になってるからですよ」 「入ってないじゃないですか」 「水城さん、この人に毒されてませんか? 入らなければいいということではないのです」 「でも、本を借りたのは私ですよ? 貸出カードだって私の名前だし……返却も私が来ますし。それでもだめなんですか?」 「屁理屈はやめてください」 「おい、お前もやめろよ」 「……斉田さん?」  白金のいう、ヘラヘラ、という雰囲気を殺したあきらが彼のほうを向く。 「亜沙ちゃんに屁理屈とかなんとかいってさ。亜沙ちゃんは僕のために聞いてくれてるだけだし。屁理屈って言わないでちゃんと答えなよ」 「……斉田さん……」  やけに真剣なその表情に、亜沙も息を呑む。と同時に、 ―元はといえばあなたのせいだからね? というのは喉にしまい、亜沙もコクコクと声には出さないがうなずいた。
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