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睨まれた彼は亜沙のほうを困った顔で見た。彼女は仕方ない、というふうに彼をかばうことに。というよりも気になることがあった。
「それはそうと……」
亜沙がこぼす。
「なんで、そこまで斉田さんに突っかかるんですか?」
ヘラヘラしていることだけが理由ではないはずだ。もちろん、リーラのやったことだけでもなく。知り合いに頼んで本を借りてもらうことがいけないことだとは、亜沙には思えなかった。
「……出禁になってるからですよ」
「入ってないじゃないですか」
「水城さん、この人に毒されてませんか? 入らなければいいということではないのです」
「でも、本を借りたのは私ですよ? 貸出カードだって私の名前だし……返却も私が来ますし。それでもだめなんですか?」
「屁理屈はやめてください」
「おい、お前もやめろよ」
「……斉田さん?」
白金のいう、ヘラヘラ、という雰囲気を殺したあきらが彼のほうを向く。
「亜沙ちゃんに屁理屈とかなんとかいってさ。亜沙ちゃんは僕のために聞いてくれてるだけだし。屁理屈って言わないでちゃんと答えなよ」
「……斉田さん……」
やけに真剣なその表情に、亜沙も息を呑む。と同時に、
―元はといえばあなたのせいだからね?
というのは喉にしまい、亜沙もコクコクと声には出さないがうなずいた。
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