四.

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「これまで魔法を使う必要がなかったから使えなかったんだ」 「でも、本の魔法陣を解くのには必要なんじゃ……」 「きっと……、自覚が足りてなかったんだと思う。だからお師匠様に頼って……」 ―え?  それを聞いて、亜沙の頭は混乱した。自覚が足りてない、ということは、先程の彼は、彼女を守ろうとする意識が強かったということになる。 ―斉田さん……私のこと、そこまで考えてくれてるの?  自惚れそうになり、いやいやと否定した。あきらは優しい男だ、亜沙を巻き込んだとよく分かっているから守ろうと強く思っただけに過ぎないはずだ、と彼女は結論付けた。 「白金さん。亜沙ちゃんは、ヒトだよ。俺はウィザー。彼女は俺が巻き込んでしまっただけだ」 「ふん、嘘も上手になったものですねえ」 「さ、斉田さん、あまり白金さんを刺激するのは――」 「亜沙ちゃんは俺のいうことに従って」  あきらの一人称が、“僕”から“俺”に変わっている。亜沙と一緒にいた“あきら”ではなさそうだった。 「水城さんがヒトだとして、なぜウィザーであることを明かしたんですか?」  白金の鋭い視線があきらをとらえる。 「話の流れで……?」 「どうして疑問形なんですか」 「言ったの僕じゃないもん。お師匠様」 「あ、斉田さんのお師匠様はリーラさんといいます」  一人称も戻り、先程までと同じようにあきらがのほほんと答えた。白金はといえば、そんな二人の様子にため息をつく。 「リーラといえば、あの魔女ですね……。本当にウィザーなのは斉田……さんだけですか」 「そうそう。亜沙ちゃんはヒトなんだ」 「ならば、魔法壁を壊す呪文はどう説明するんですか?」 「それは……斉田さんが、ウィザーとヒトを見分けるのに使うといいっておっしゃって……」  本当のことなのだが、もごもごと口ごもりながら言う。彼はそれを聞いてなるほどとでもいうようにうなずいた。
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