「だから私は本当にヒトなんです、魔法なんて使えないし、斉田さんのことも誰にも言ってないですし、言うつもりもありませんっ」
「だが、呪文を使うということはウィザーを探していたということでしょう?」
「ええと……それは……リーラさんいわく、協力者を探せ、みたいな……」
「協力者、ですか」
リーラが言っていたのはそういうニュアンスのことであり、亜沙は頬を爪先でポリポリ軽くかきながら白金を見て弁解する。
「僕から言うよ」
「なんでしょうか?」
「サラという偽名を使っている魔女がいるんだ。その人はマジカルシティをつくろうとしている」
「……それは、どちからといえばいい話ですね」
あきらのように、いやリーラのように、普通の魔法使いにとってはなんらデメリットはないのだから、白金が肯定的なのは自然だった。
「でも、マジカルシティがもしつくられたら、リーラさんは永遠に猫の姿のままになってしまう。それはどうしても避けたいんです」
「そ、そう! 私だって、ヒトが奴隷にされるって聞いて……」
「……ヒトが奴隷に。奴隷になれるほどの有能なヒトなんていますかね」
―あれ? もしかして。
リーラのように、ヒトが奴隷になることはなんとも思わず、むしろ歓迎するのかと思えばそうではなさそうだ。亜沙以外の“ヒト”が関係しているかもしれない。
「白金さん、もしかしてこの図書館の職員さんに好きな方がいますか?」
「はい?」
「さっきの言葉、裏を返すと奴隷になっていいヒトはいないってことですよね」
「ふぅ……。水城さん」
「はい!」
ツカツカ、と少し亜沙に歩いて近寄った白金は両手を拳の状態にして彼女の耳上あたりでゴリゴリとすりつけた。
「いたたたたた、いた、いたい!!」
思わず両手を払いのけ、あきらの影に隠れるようにして後ろにとびのく。
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