「……どういうこと?」
この半年で亜沙が知ってるあきらに関することといえば、その一、二十七歳であること。
その二、自称読書家で一度に上限を超える二十冊をかりては一ヶ月以上持ってこないこと。
その三、そこそこ大きな一軒家に一人で住んでいて猫を飼っているということ。
その三つだけだ。
猫の件は、飼い猫が本を裂いたとかでばっちり爪痕が残ったボロボロになった本を持ってきたことがあったからだ。一度だけでなく、何度も。
その都度、新しいものを買って弁償してもらっているのだから、いい加減猫のしつけをしてほしいというのも亜沙の感想である。
「亜沙ちゃん、斉田さんのこと任せてごめんね」
「あ、佳奈お姉さん。さっき、帰りました」
「そう。あの人も困ったものよねぇ、ホント」
亜沙と佳奈は姉妹のように仲がいい。彼女はいまだ独身で、亜沙の父の妹にあたる。つまり、亜沙たち家族の住む家と、父の実家は近いということになる。図書館で働くようになってますます二人は距離が近くなっていた。
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