そんなわけで、水城さんと呼ばれると二人が反応するため、大体の人は佳奈さんもしくは亜沙さんと呼ぶ。ちゃん付けで呼ぶのはあきらくらいだった。
「明日も来るとか言ってましたよ」
「えー?! うちも出禁にしたいくらいねぇ」
「でもしないんですよね」
「そりゃあねえ。そこまでするとかわいそうじゃない。ほら、前の図書館には出禁になっていけなくなったから引っ越してきたのよ」
そう、一軒家を買ったということはこの町にほぼ永住するつもりなのだと考えるのが自然だった。
「そういえば、斉田さんって一人暮らしなんでしょうか」
「だと思うわよ。前にスーパーの袋もって歩いてるの見たけれど、一人分だったわね」
「……一人で一軒家、ですか」
「これから結婚でもするんでしょうよ、きっと」
佳奈は笑ってそう流したが、亜沙はやはり彼のことが気になった。今まで気にならなかったのが不思議なくらいだ。
彼を頼らざるをえない状況になるとは何なのか。
―行ってみないと。
「あの、今日、終わったらコンビニに寄りたいので佳奈お姉さんは先に帰ってください」
「そう? わかったわ」
アルバイトを終えた彼女が、家ではなくあきらの自宅のほうへ向かおうと決めたのは、その好奇心が理由だった。
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