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翌週。
昼休みにお弁当を食べていると例の傘の件を探っていた一葉が申し訳なさそうな顔でやってきた。
「ごめん…。あの時、私の折り畳み傘を貸せばよかったのよね…。」
いきなり何の話か分からない…。
「色々調べてみたんだけど、あの傘昔事故死した生徒のものらしいの。」
話は次のようなものだった。
その人は正義感の強い生徒だったそうだ。
風紀委員に所属し、素行の良くない生徒をよく注意していたらしい。
昔はこの学校にも存在していた不良達にとっては煙たい存在であったようだ。
今と同じような時期の大雨の日。
不良達は彼女の傘を隠したらしい。
ただの嫌がらせだったとか他人の傘を無断借用したらそれを弱味として黙らせようとしたとか言われているらしいが、今となっては真相は判らない。
結果として彼女は大雨の中傘も差さずに帰宅している途中交通事故で亡くなったそうだ。
あの目立つ色の傘を差していれば事故は回避できたかもしれない。
それから何年か経ってから雨の日にうちの生徒が事故に遭う事が増えたという。
最初は偶然と思われていたが事故に遭った生徒達の話を聞いている内に彼等が共通して事故の直前に黄色の傘を借りていた事が分かったのだ。
その傘の特徴から前述の生徒の傘ではないかという話になったそうだ。
事情を知る先生達の間では傘の無断借用に罰を下しているとかどのような状況でも他人の傘を盗らないか試練を与えているとか言われているらしいけれど…。
あの傘を借りていたらただでは済まなかったのだろうというのは確かなようだった。
確かにあれ以降あの傘を見かける事はなかった。
卒業して三年後、たまたま八雲先生と話す機会があったので、あの傘の事を訊いてみた。
「まだ目撃証言がある。成仏はしてないな。」
あの傘の持ち主の事故を目撃した先生はそう言っただけだった。
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