誘惑の傘

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 ある大雨の日の事。 私は学校から帰ろうとして玄関口で途方に暮れていた。 外は大雨。それは校内にいた時から気付いていたが…。 …折り畳み傘を一本鞄の中に入れていると思っていたが、どうも前回使った後鞄に仕舞い忘れていたらしい…。 最寄りのコンビニまで走って大体二~三分程度。雨の強さからして鞄で庇っても大分濡れそうだ。 ふと明るい黄色の傘が目に入る。 時間は大分遅く、私以外に殆ど生徒は残っていなさそうだ。誰かの忘れ物だろうか。 この傘を借りてコンビニに行き、傘を買ってから返せば濡れずに済む。脳裏にそんな考えが浮かぶ。 私は時計を見てその考えを打ち消した。もう下校時間を過ぎている。傘の持ち主が校内にいたらそう時間を置かずに下校させられるだろう。扉が閉められて借りた傘を返せなくなる可能性もある。どちらであっても持ち主が困るかもしれない…。 私は覚悟を決めて鞄を頭の上に掲げコンビニまで走り出した。
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