十五、橙矢さんと白田さんの素顔

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十五、橙矢さんと白田さんの素顔

「橙矢さんは? 一緒じゃないの?」 「それがぁ……あのぅ……わたしぃ車で来てるので車の中で話しませんかぁ? 藍さんちまで送りますよぅ……。」 「いいの? ありがと」  由黄ちゃん、すっごく元気ない。どうしたんだろう。  駐車場に着いて車に乗った。私は助手席。車が走り出す。カフェが見えてきた。外の席で飲み物を飲んでる朱理先輩がいた。由黄ちゃんの車に気づいて手を振ってきた。 「朱理先輩がいるよ」 「乗せて行きましょうかぁ……」  朱理先輩に車に乗るように声をかけた。 「二人とも食事に行かなかったの?」 「アハハ、緊張して今日は断っちゃいました」 「もったいないわね。気持ちが盛り上がってるうちにデートに行ったほうがいいのに」 「来週のプロレスのイベントに行く約束はできました」 「うんうん、いいわよ! それで相手はどんな顔だったの?」 「それが思っていたより、かっこよくて緊張してあまり目を合わせられませんでした」 「あらあら、藍ちゃんたら〜。大丈夫よ、イケメンなんて見慣れるから!」 「だと良いんですけど……」  来週もほとんど覆面かぶってデートだからまだまだ見慣れないと思う……。 「由黄ちゃんは? 橙矢さんとご対面どうだった?」 「そぅですねぇ…………」 「あらっ、全然元気ないじゃない。どうしたの?」 「橙矢さんにぃ……たぬきうどんを食べに行こって言われたんですけどぉ……断っちゃいましたぁ……」 「どうして? お腹いっぱいだったの?」  由黄ちゃんが浮かない顔をしてる。どうしたんだろう。ずっとご機嫌だったのに。 「…………橙矢さんの覆面とった姿が、思ってたぁんと違ったんですぅぅぅぅ!」 「あら、そんなにタイプじゃなかったの?」 「具体的には橙矢さんに悪いので言いませんがぁ。見た途端に気持ちがぁ……」 「冷めちゃったんだ」 「うぅぅぅ…」 「由黄ちゃん、性格は合いそうな感じなんでしょ? また会ってみたら? 初対面で顔にビビッと来なくていいのよ。何度も会ってくうちに、だんだんその人のこと好きになってくかもよ!」 「そうだよ、由黄ちゃん。だんだんかっこよく見えてくるよ」 「そうそう。最初は変な顔だなって思っても、だんだん見慣れてくるから! そのうち愛着わいてくるかも!」 「………そうですかぁ? ……わかりましたぁ。また会ってみますぅ。たぬきうどん食べたいですしぃ。」 よかった、よかった。せっかくカップリングしたんだもん。この縁を大事にしたいよね。 「ずぅっと覆面かぶって話してたのでぇ、素顔で話した時は急に初対面になっちゃったみたいでぇ、緊張しましたぁ」 「そうだよね。私も緊張したー」 「いいわね、二人とも。私もその感覚味わってみたかったわ」 「朱理せんぱぁいは、誰狙いだったんですかぁ?」  えっ、由黄ちゃんそれ聞いちゃうの? 私も気になるけど。 「私はね、金田さん良いと思ったのよね。お金持ちだから。でも金田さんは離婚歴があって、もう子供いるからほしくないんですって。私は子供ほしいから合わなかったわ」 「そうなんですかー」 「あと、白田さんも気になったんだけどね。お金持ちだから。でもオドオドしてるところがね。私、気が短いから見守ってあげられないなって思ったのよ。イライラしそうで。モラハラ妻になったら可哀想だからね」  朱理先輩、旦那さんのこと尻に敷きそうだもんなあ。 「結局、他の人の番号を3人分書いたんだけど、ダメだった!」  それでも三人にしぼったんだ。選ぶの大変だよね。 「朱理せんぱぁい、白田さんって背の低い人でしたよねぇ?」 「そうそう、背が低い人。丁度あのコンビニの前に立ってる人と同じくらいかしら〜。ねえ、藍ちゃん」  朱理先輩が車の外を指さした。丁度信号が赤になった。 「あっ、そうですね。でもあの人すごくかわいらしい顔立ちですね。アイドル俳優みたい」 「あら。ほんとね。かわいいわ」 「目の保養ですねぇ」  コンビニの前の背の低い男性が人とぶつかりそうになり、ペコリと腰を直角に曲げておじぎをした。 「あっ、今のペコリ! もしかして白田さん?」 「ええっ。白田さん、あんなにカワイイ顔してるの? ちょっと私、声かけてくるわ!」 「朱理せんぱぁい! 反則ですぅ! 顔じゃなくて中身で選ぶんじゃなかったんですかぁ?」 「それは主催者の意向であって、私の考えじゃないわ! 私は覆面かぶって婚活パーティーに出たかっただけ!」 「先輩! さっき、オドオドした白田さんじゃモラハラ妻になるって言ってたじゃないですか! うまくいきませんよ! あきらめましょう!」  私と由黄ちゃんは朱理先輩を説得した。
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