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五、お金にうるさい金田さん・ゴリマッチョ橙矢さん
「オレンジジュースを飲み終わってから、ケーキを食べた方がいいぞ。ケーキを先に食べてから、オレンジジュースを飲んだら口の中がすっぱい、すっぱい!」
「えっ、あっはい。そうですね」
確かにそのとおりだ。ケーキを食べる前に言ってもらえてよかった。この人声が大きくて耳が痛い。
「親戚がケーキ屋なんだけどねえ、いっつもケーキと一緒にオレンジジュースを出してくるんだよお」
「そうなんですか」
「ビタミンCは大事だけどねえ、ケーキとは合わないよお」
「そうですね。私もそう思います」
ケーキには紅茶かコーヒーがいいな。
「ここのケーキもねえ、まあ2500円で食べ放題でこの味なら、まあまあかなあ。ああ、女性は500円だったねえ。そう考えるとケーキの原価はいくらなんだかなあ」
「そうですね」
女性は500円だって知ってるのか。隠さなくてもいいんだね。でも初対面でお金の話なんて、なんか嫌だなあ。
「500円なら充分だねえ。飲み物も飲み放題だし」
「そうですね」
どうしよう私。そうですね、ばっかり言ってる。
「男は2500円だからねえ。まあ、男女とも500円だと運営できないだろうし、こういう婚活は男ばっかり集まるだろうねえ。女性を集めるには女性の料金を安くしないとねえ。仕方ないねえ」
「あっ、そうなんですか。
すみません、500円で参加してて」
「でもやっぱり婚活に対する意気込みも違うよねえ。500円だと、ただケーキ食べに来てるだけっていうかさあ。あっ、君がそうってわけじゃなくて、そういう人もいるんだよお」
「はあ、そうなんですか」
由黄ちゃん、しゃべらないな……。あっ、ケーキを無心で食べてる……。
しょうがない、私がこのおじさんと話すか。口の周りのヒゲに白髪が混じってるから、おじさんだろう。
なにを話そう。あっ、そうだ!
「その金色の覆面かっこいいですね!」
「おっ! ありがとう! 実は私物なんだよお。私は金田と言ってね、この覆面婚活パーティーには何度も参加しているんだが、貸し出しの覆面には金色がなくてねえ」
「えっ、私物なんですか!」
「そおなんだよお! 特注で作ってもらったんだ! 気に入ってるんだよお!」
金色の覆面の金田さんは、覆面をほめてもらえてご機嫌の様子だ。
「特注なんてすごいですね! 高かったんじゃないですか?」
このおじさんには全く興味が無いが、金色の覆面には興味ありありだ。スマホで写真撮りたい。でも勘違いされそうだから我慢しよう。
「そおなんだよお! 何万円もしたけどねえ! 何度もこうやって参加してるからねえ! みんなに見てもらえてうれしいよお!」
「えっ、覆面見てもらいに来てるんですか? 結婚相手探しに来てるんじゃないですか?」
「結婚相手? ああ、見つからないねえ……。だからこうやって………何度も来てるよ……」
金田さんは、さっきまでの勢いが無くなりショボーンとしてしまった。
「あっ、すみません。お互い、いい人が見つかるといいですね!」
「そうだねえ……。お互いがんばろうねえ……」
「それじゃあ、失礼しますね」
私、金田さんのこと傷つけちゃったかな。反省。
さて、違う人と話さなきゃ! えっと由黄ちゃんは……。あっ! オレンジ色の覆面の人と話してる!
「そぉなんですかぁ、うふふ」
「あはは、そうなんですよー!」
な、なんかうまくいってるみたい。うらやましい! オレンジの覆面の人、めっちゃムキムキなんだけど。もう、ゴリゴリのマッチョ! 胸の筋肉がすごい。シャツがはち切れそうになってるよ。わざと小さめのシャツ着てるのかな? ナイス胸筋! グレイトォ! 腕も太いよー! 太もももゴッツい! うわー、いいなー! 筋肉ゥー! フゥー!
……私、体ばっかり見てるな。
「それでぇ、とうやさんはぁ、どんな漢字を書くんですかぁ?」
「えっと、とうは木編に登るって書きます。
橙色の漢字です。やは弓矢の矢です」
へー、橙矢だからオレンジ色の覆面なんだ。
「そぉなんですかぁ、素敵な漢字ですねぇ」
「そうですかー? ありがとうございますー」
性格も優しそうだなー。覆面から見えてる目もキラキラしていて、いい人そうだなー、いいなー。
マッチョな橙矢さんと、巨乳の由黄ちゃん。お似合いじゃーん。
私はオレンジゼリーを食べながら由黄ちゃんと橙矢さんを観察していた。
すると、青い覆面のスラッとした人が見えた。
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