表層の蜃気楼

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 僕、宮田はただのやる気のない高校生だ。  僕は放課後は部活動もしていないし他の委員にも所属していないので暇だったために、憧れの先輩が所属している図書委員の手伝いをすることになった。無理矢理ではなく、その先輩がいるから手伝いをするのだ。  作業は来月に取り寄せる書籍を決める会議と今月取り寄せた書籍の確認および本棚に配列、というものだった。内容だけ見れば特に大変なものではない。しかしそれは人数がいれば、である。図書委員は憧れの先輩を含めてたったの三人。そのうち二人は今日欠席しているそうだ。僕と憧れの先輩、二人っきりである。嬉しいことでもあるのだが仕事が予想以上に大変だった。  結局終わったのは、六時前。夏なのでまだそこまで暗くはないが、部活動も終わる時間になってしまっていた。疲れ切った僕と先輩はクーラーの効いた図書室で休んでいた。他愛のない話を先輩とするのは何よりも楽しく今日の仕事には十分すぎる報酬だった。少しすると、図書委員担当の先生が図書室に入ってきた。 「お疲れ様!たった二人に任せちゃってごめんね~、会議が長引いちゃって。これ、よかったら食べて!・・・みんなには内緒よ?」  先生はウィンクをしながら僕たちに冷えたアイスを手渡した。僕と先輩は「ラッキー!」と笑い合いながらアイスを食べた。まさかこれが原因であんなことになるなんて微塵も思わなかった。  次の日の帰る前のHRで事件は起きた。先生が連絡事項を確認しているときに、誰かが声を上げた。 「先生!昨日、宮田君がとんでもないことをしていました!」  僕はその名前も忘れた女の方を真ん丸な目で見た。一体何を言っているのだと言わんばかりの目だっただろう。女は続けた。 「宮田君は昨日の放課後に図書委員の仕事をしていました。しかし、宮田君は図書委員ではありません。それだけならいいのですが、仕事の後に報酬を受け取っていました。ただでさえ合法なルートで行った仕事ではないのに、報酬まで受け取るとは・・・!これは、『闇営業』です!」  僕はこの女が何を言っているのか全く理解できず、脳が思考を完璧に停止してしまった。気が付いた時には僕は学校を謹慎、学内通信では「闇営業」の核心に迫る記事が出回っていた。  僕が学校に戻り、憧れの先輩とまた話すことができる日は来るのだろうか。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!