6月の夢

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6月の夢

夢だから唐突に始まる。 そこは、大きな図書館の様なところで、学生だけでなく主婦や勤め人の様な種々雑多な人達でいっぱいだった。 説明なんてないから分からないけれど、どうも大学の施設のようだった。 なぜか。今日は実技試験の当日だった。 そもそもなぜそんなところで試験が行われているのかは、分からない。 でも、おかしいなって思っている自分もいる。 「お題」が発表された。 試験だから、問題が配られたんだろう。 2つの課題が出たようだった。 何も驚かず、当然のように描き始めていた。 次の場面では、既に描き上がっていた。 通っていた大学にそんな学科はなかったはずだけど、課題は女性のキャラクターのイメージ画をメインにキャラの設定課題のようだった。 念のために言っておくと、受験科目に実技試験はあったが一課題だったし、そんな大学なんてとっくに卒業している。 定期試験の夢はよく見るが、入試なんて、ここしばらく見たことはなかった。 具体的な設問は、2人分のキャラをつくって仕上げる。サイズはA3用紙の大きさだった。 時間は指定されているけれども、今が何時なのかもわかっていないから、とても夢っぽい。 時計を確認したわけではないけど、時間配分は余裕だった。 1枚目はほぼ完成して、当然2枚目に取り掛かっているから楽勝の流れだった。 ここまでは何もストレスはなかった。 自分が見ている自分の夢なんだから同然なんだろうけど、性格的に80%まで仕上げて、完成の目処が立ったら、次へ進むと言うのは鉄板のやり方だから。 そのまんま予定通りに進めばなんのこともなかったんだろうけれど、ここからがやばい。 好きな絵を描いてる夢は、それはそれで心地よかった。 ここからが本編だね。 そんな実技試験中にも関わらず、周囲の人達がザワザワと動き出して、受験生の描きあげたデザイン画を集めたりし出している。 普通ならあり得ないのに、別に不思議だとは思わなかった。 その集められたデザイン画が回ってくるものの、自分には関係ないので、スルーした。 スルーしたが、その時に自分の描いた用紙まで集められてしまっていたようだ。 それに気づいたのはもう少ししてからだった。 慌ててその集められた用紙のところで、自分のデザイン画とを探したが見当たらない。 パニックの前兆。 自分の早合点かと思って席に戻って、身の回りを確認しようとしたら、今度は今作成中の用紙までなくなっていた。 さらなるストレス。 そんなバカなことがあるものかと、周囲を見渡すと、他の受験生たちは何事もなかったかのように制作に没頭している。 その瞬間は、意味がわからなくてしばし呆然としていた。 もし、故意的に奪われたのだとしたら大変だ。何故なのかは分からないものの、とにかく試験監督を探すが見当たらなかった。 「製作したデザイン画が何故かなくなっている。」と主張するが、関係者にまで届いているわけもなく。 一人騒ぎ出しているだけで効果はなかった。 騒ぎが大きくなると、関係者の方から取り押さえに来たから好都合だった。 焦りすぎだけど、いままでの事情をまくし立ててなんとかしろと騒いだ。 関係者と言っても、試験監督のバイトなんだろう意味不明なことを言って、事務室まで連れていかれた。 流石にその事務所には、大人がいて対応してくれることになった。 「何があったんでしょう?」 「良かった。話ができる人がいてくれて。作成したデザイン画が2枚ともなくなってしまったんですよ。」と言うと、その男は怪訝な顔をしてまた繰り返した。 「何故なくなったんでしょうか?」 「それがわかれば苦労はしないですよ。」 どうも、バイトから何も聞かされてないらしく、仕方がないから全てをかいつまんで説明した。 「でも、その様子を見ていたのはあなた一人だけで、他のものは何も知らないと言っていますよ?」と否定的なことしか言わない。 こりゃ。 埒があかないから、とにかくデザイン画だけは確保してよって受験番号を教えようとしても、控えも何もなくて分からない。 そんなこんだだと、まるで一から十までデタラメだと思われてしまって始末に悪いとバタバタしてた。 そうしてると、どこからともなく昔の後輩なんだけど、今はその大学の指導者になっている「田中くん」がやってきた。 「ねぇ?先輩。どうも、先輩は嵌められたみたいなんですよ。」と耳打ちして含み笑いをする。 「どう言うことなんだ?」と食ってかかると。 「まぁまぁ。少し落ち着いて…」 服の乱れを直しながら、上目遣いでこう言った。 「どうも、あなたにきてもらっては困る人が、何やら企んだようでね。」 そうだった。 そもそも、何年か前に非常勤で講師をしてた時から、その怪しい人物には目をつけられていた。 被害妄想の激しい内弁慶が、そこまでするとは思っていなかったからだ。 ましてや、今回は講師ではなくて受験しようってことなので、そんな危惧すらしていなかったし、考えらた事もなかった。 しかい、もしそうだとしたら。 「男の嫉妬」か。 何をどう受け止めたのか分からないが、嫉妬だとしたら手の打ちようがない。 大きなため息をついたとき、目が覚めた。
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