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リベック・スーゲルはシーデンの中央区画のコーヒー店で新しい豆を買って、第一区画の市庁舎へと帰る途中だった。今回もいつも通りのブレンドの物を店の店員に用意して貰い袋いっぱい入れて貰うと、重さで疲れそうになる体に鞭打って道を歩く。
そうして市庁舎へ着くと、エレベーターに乗り二十七階を目指す。ポーンと音が鳴って辿り着くと、リベックは端の方にある第三十五部署『魔術解析捜査部』の扉を開いた。
「ただいま戻りました」
と扉を閉めつつそう呟くと、部署長の席に座るのは十二歳程度の少年で、綺麗な金髪の下には右目に黒い眼帯を付けており、大人用の白衣をダボダボの状態で着て黄色いネクタイを着けているというアンバランスな感じを得ない。そのゾーロが「お疲れ」と声を掛けてくれた。
ソファスペースで寝息を立てているのはキアナ・アベースト。印象的なオレンジの髪に眼鏡を掛けていて、男性にしては長身の部類に入る。すやすやと眠っているキアナを起こさぬ様に部屋の中を移動すると、
「少し休憩コーヒー淹れますね」
「ああ、済まないな」
そう言うとリベックは給湯室へと入り、湯を沸かし、ミルで豆を砕いてドリッパーの用意をする。砕いた豆を入れると沸いた湯を注いだ。出来上がったコーヒーを二つのカップに注ぐと簡単に片づけをして、ゾーロの元へと持っていくリベック。
「どうぞ」
「ああ、済まない」
リベックも自分の席にコーヒーの入ったカップを置くと、積み上げられた書類に手を出した。『魔術規範』を引き出しから出すとそれを見ながら書類に赤ペンを淹れたり判を押したりという作業をするのだった。
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