おめでとう、平凡で普通な故に君は選ばれた。

2/15
237人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
戸惑いしかない胸中で、就職して二年が過ぎるか過ぎないか程度ですが、二十数年間の人生のなかでも、中々色濃く、そして一般的にみたなら厳しい半年間を警察学校という場所で叩き込まれた一説が事が山田翼の頭の中に過ります。 「えっと、こういう場合は事件がおこったわけでもないわけだし……先ずは()()()()」 自分自身を落ちつかせるように口に出してはいますが、この現状を事件と呼んでいいものなのか、それとも自分が幻想的な夢を見ているのか判らない状態ですが、取りあえず今の自分の状態を、懸命に頭の中で整頓しようと、脳内で奔走しました。 そして、そんな中で歌手名は忘れてしまいましたが、歌の出だしが"夢だったらよかったのにな"的な、とても流行をした、余りそこまで芸能に興味がなかった山田翼でも記憶に残る位有名で、印象的な旋律(フレーズ)も不意に頭を過ったりもします。 "なんでこんな時に思い出しているんだ"と自分自身に突っ込んでいましたが、心中的にはその文言通りで、一蹴する事も出来ず、そして体感的には夢とは思えない程の、現実的ではっきりとし過ぎている現状を把握しました。 それは、自分が意識を取り戻した時の恰好は、俯せの恰好で臥せっていて、そこから身を起こした事で、視界は低いと感じながらも、古いビルの階段の踊り場から砂漠を見下ろすという様な、日常では中々味会わえない感覚であるという事も認知します。 「そうだ、ここは()()()()()()、だから、()()()()()()()()()()()()」 今度ははっきりとそう言葉にだしつつ、日常的に一定の運動を行っていて、平均的な身体の二十代前半の男子に相応な動きをもって起き上がりました。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!