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部活の先輩後輩という事で、哀しいかなこういった意思の疎通に関しては実に"通過の仲"という具合で、翼は水前寺の発言を理解します。
夕方の18時までに、芽生の安全な姿を確認しなければ警察として動くという、それは宣言でした。
「でも、カウンセラーさんも、学校の教職員さんも凄く慎重にしているみたいだって話しましたよね?」
「あのねぇ山田、貴方の仕事は何?。
何の事情があるかもしれないけれども、小学生女児が朝から姿が見えない状況だっておまわりさんとして判っていると言うのに、説明もないから黙って見過ごすっていうの?。
常識的に言って、あり得ないわ」
はっきり・きっぱりといった調子で水前寺が言った時、マナーモードの振動音が翼のスマホから響いて、途端にそれまで緊迫していた雰囲気が和らぎ、少しだけ期待をして2人のおまわりさんは既に取り出している携帯電話の液晶画面を見ます。
そこには相手の電話番号だけが表示されていて、その並びから察するに固定電話からではなく名前はという物は表示されてもいませんでした。
「誰?さっきのカウンセラーさんから?」
「いえ、早乙女さんのはさっき登録しましたから、知らない番号です」
ただ、知らない番号ながらも、それが芽生の安否に繋がるものならと、仄かな希望を抱きながら翼は通話の箇所をタップし、水前寺にも聞える様にと、そのままスピーカーモードに切り替えます。
『やあ、こんにちは、翼君。佐藤です、お昼休みと思って電話をしたのだけれども、今は大丈夫かな?。
それとも、お仕事中というのなら、時間を改めてかけ直そうか?』
「はっ、え?さ、佐藤さんですか?」
スピーカー状態にしたスマホから響いたのは、翼の記憶が確かならば今朝の"夢の中"から以来になる、"チェアマン佐藤"のものと思われる穏やかな紳士の声でした。
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