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おめでとう、平凡で普通な故に君は選ばれた。
山田翼が意識を取り戻し、自分の眼前を先ず確認をすれば、そこに広がるのは見下ろすという形で視界に嫌でも入って来る、果てなき砂漠という風景。
普通に義務教育を終えて、そこそこの進学校に進学して、ついでにそれなりの大学に入って得た"常識"で、目の前に広がる光景は、太鼓判を押して砂漠という表現でしか当てはまるものがありません。
そして山田翼がそんな光景を見ている場所と言えば、これも今まで普通に培ってきた常識で言うなれば、"古いビルの屋外階段の踊り場"と例えるのが妥当な場所でした。
踊り場である事から、自分が果て無く続く様に見える砂漠という風系を見下ろすという形になっているのだと理解します。
「……嘘だろ」
そんな高校生の時分に、流行っていたから付合い程度に読まされていた"いきなり知らない世界に飛ばされてしまった系"のライト小説とかいう部類の主人公が口にしたような台詞を口にします。
最近は異界に飛ばされるにしても、一回死んだりして生き返った先で人なら兎も角、他の動物やそれこそ幻想な生き物や、挙句には怪物という事もあるのは、本屋で立ち読みする程度で得た常識で知っていました。
けれども、自分はどうやら人の恰好をしているし、耳に入って来る声は普段通りの"山田翼"のものと、そこに気が付いて思わず安堵の息を吐き出します。
「そうだよなあ、ファンタジーやメルヘンじゃあないんだから……じゃあ、これは夢という事になるのか?」
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