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お世話になります、くらいは言って欲しい。
思わず通話終了の為のタッチをしようとしましたが、黒の美形がどうやってスマホを手に入れたのかを考えてその動きを止めます。
『ちょっと代わりなさい、翼、聞こえていますか?、解りますよね、私です』
「お、おう」
そして今度聞こえて来たのは白い美形の声で、益々戸惑います。
黒い美形、あの夢の中でチェアマンから悪魔と紹介された彼なら、単独行動で外出して、誰かに調子の良い事でも言って携帯電話位かけてきそうだという想像は出来ます。
けれども天使と例えられた白い美形が行動を共にしていたなら、一般的に常識から外れた黒い美形の動きを口うるさく監視して、少なくとも人の迷惑になる行動はとらせないと予想します。
だからこうやって誰か携帯電話を通じてかけている事は、天使が関与している限りは少なくとも、真っ当な方法でかけられてきているのだという結論を出した頃、白い美形が、経緯を語り始めました。
『私達が遅刻しそうな貴方を送り届けた後、荷解きと家の片付けが終わって、合い鍵も預けて貰った事ですし、少々時間は早いですが色んな手続きもありますし、外出をしようと家を出た所で、この携帯電話の持ち主の方と、玄関を出た先で遭遇しました。その方が翼に用事がある様です』
「ああ、ええっと、つまりは、その人の電話からかけているってわけなんだな?」
色々とツッコミたい個所はありましたが、どうやら通話先には一般人がいるらしく、ここで大袈裟に怒鳴ったなら、明らかに話がややこしくなると考えて、言葉をグッとこらえます。
けれども、堪えたことで、少しばかり気持ちも落ち着いて、ある疑問が浮かびました。
『……あれ?、でもその人、どうして俺のスマホの番号を知っているんだ?』
「そちらの理由は御本人から、ご確認してください、どうぞ―――」
そう言って物音がしたと思ったなら、スマホ越しにでも緊張しているのが伝わって来る息遣いと共に、少しばかり震える声と共に持ち主の声が翼の耳に届きます。
『あの、私、山本芽生さんの通う小学校のスクールカウンセラーをさせて貰っている、早乙女典子と申します』
「あっ、どうも、えっとこの地域のおまわりさんやっている、山田翼と言います」
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